紫式部といえば、世界最古の小説であり海外でも高く評価されている『源氏物語』の作者とだけ思われがちです。しかし、同著となる『紫式部日記』、別名『紫日記』も、平安王朝の実像を後世に伝える貴重な日記文学として位置づけられています。その内容は、中宮彰子の出産が迫った1008年(寛弘5年)秋から1010年(寛弘7年)正月までの約1年半の間に書き遺した日記、書状で構成されています。
『源氏物語』においては、多くの雅楽曲名が登場し、また演奏・演舞の場面が描かれています。しかし、これは小説であるが故にフィクションと解釈されます。一方、『紫式部日記』に書かれている雅楽の場面は歴史的事実であり、雅楽研究に一石を投じる貴重な要素を含んでいます。
このアルバムでは、『紫式部日記』の朗読と共に、記載された雅楽曲を当時の雅楽譜で演奏するという、本邦初となる企画に基づき制作されました。
1. 第一部 敦成親王誕生記 第一章 寛弘五年秋の記 一 土御門殿邸の初秋の様子 朗読/松浦このみ
2. 平調「萬歳楽」 楽琵琶/左野龍子。
3. 大食調「大平楽道行(朝小子)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
4. 大食調「大平楽破(武昌楽)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
5. 大食調「大平楽急(合勧塩)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
6. 第一部 敦成親王誕生記 第二章 寛弘五年冬の記 六 御前の管弦・舞楽の御遊 朗読/松浦このみ
7. 壱越調「賀殿破」 龍笛/長谷川景光、楽琵琶/左野龍子。
8. 壱越調「賀殿急」 龍笛/長谷川景光、楽琵琶/左野龍子。
9. 大食調「長慶子」 龍笛/左野龍子、大篳篥/長谷川景光。
10. 第三部 宮仕生活備忘記 第三章 寛弘七年正月 若宮たちの御戴餅 三 正月十五日敦良親王御五十日の祝い 朗読/松浦このみ
11. 催馬楽「安名尊」 楽琵琶/左野龍子、歌/長谷川景光。
12. 双調「鳥破」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
13. 双調「鳥急」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
14. 双調「調子」 笙/左野龍子。
左野龍子 楽琵琶、楽箏、龍笛、笙。
長谷川景光 龍笛、大篳篥。
松浦このみ 朗読。
解読校訂:左野龍子(『三五要録』、『仁智要録』、『鳳笙秘譜』。)
解読校訂:長谷川景光(『龍笛譜』、『催馬楽笛譜』。)
解読復元:長谷川景光(「長慶子」大篳篥譜、「鳥破・急」龍笛譜。)
原文校訂:渋谷栄一(『紫式部日記』黒川本。)
2024年9月21日リリース/日本アコースティックレコーズ(NARC-2190)
定価2,000円(税別)
源博雅は平安時代中期の公家ですが、日本の歴史上の人物の中で、博雅ほど多くの逸話、説話を遺している人物は希有と言えます。
さながら神の如く、妙なる楽の音とともに生まれ出でたとか、琵琶の秘曲を修得するため蝉丸法師の住む逢坂に3年間毎夜通ったなど枚挙にいとまがないほどです。
醍醐天皇の第一皇子である克明親王が父でしたが、皇位継承者であるはずの克明親王が早く身罷かられたため、臣籍に下り源の姓を名乗ることになるのですが、父が健在であれば、皇位継承者として天皇になっていたはずなのです。
また、博雅は多くの楽器の演奏に秀で、また研究者としても多くの楽譜を編纂し、そして作曲も行うという、近代以前における最も偉大な音楽家の一人と位置づけられます。
博雅には、多くの呼び名があり、博雅の三位、博雅卿、長秋卿などが知られています。
さて、このアルバムでは、博雅に関する説話などの記載に基づく楽曲の多くが秘曲とされていることに着目し、選曲しました。龍笛、笙、楽琵琶、楽箏による二重奏と、笙、琵琶、大篳篥の独奏を収録しています。
1. 大食調「入調」 笙/左野龍子。
2. 沙陀調「安楽塩」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
3. 風香調「大常博士楊真操」 楽琵琶/左野龍子。
4. 黄鐘調「啄木」 大篳篥/長谷川景光。
5. 啄木調「爪調、緒合」 楽琵琶/左野龍子。
6. 啄木調「啄木」 楽琵琶/左野龍子。
7. 大食調「長慶子」 龍笛/長谷川景光、左野龍子。
8. 返風香調「石上流泉」 楽琵琶/左野龍子。
9. 盤渉調「萬秋楽序」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
10. 返風香調「上原石上流泉」 楽琵琶/左野龍子。
楽琵琶、楽箏、龍笛、笙/左野龍子
龍笛、大篳篥/長谷川景光
三五要録、仁智要録、西園寺実兼琵琶譜、鳳笙秘譜を解読校訂/左野龍子
新撰楽譜、龍笛譜、高麗篳篥秘譜を解読校訂/長谷川景光
2024年2月6日リリース/日本アコースティックレコーズ(NARC-2189)
定価2,000円(税別)
アルバムタイトルである「わくらば(邂逅)」は、偶然の出会いを意味します。三人の出会いはチラシ配りをお願いすることから始まりました。そして、互いの音楽性に共感し、平安朝雅楽の演奏とピアノ演奏という時空を超えたコラボレーションを作り上げました。
「平安の調べは美しく、そして悲しく」。これが、このアルバムのコンセプトです。
龍笛は966年と1137年に作られた楽譜を、楽琵琶は平安時代末期に作られた楽譜を演奏し、そしてピアノは長谷川景光の作曲・編曲により、遠藤征志が演奏しました。
長谷川景光/龍笛
遠藤征志/ピアノ
左野龍子/楽琵琶
1.ピアノのための青海波音取
2.盤渉調 青海波
3.ピアノのための西王楽音取
4.黄鐘調 西王楽破
5.ピアノのための小娘子音取
6.平調 小娘子
7.ピアノのための竹林楽音取
8.盤渉調 竹林楽
9.ピアノのための抜頭音取
10.大食調 抜頭
11.ピアノのための想夫恋音取
12.平調 想夫恋
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛譜を解読校訂。ピアノ譜を作曲・編曲。
左野龍子/三五要録を解読校訂。
2019年4月3日リリース予定/フォンテック(FOCD20117)
定価2,000円(税別)
『源氏物語』に比肩する中古文学の双璧であり、わが国最古の随筆である『枕草子』には、多くの雅楽の曲名が記されています。
このアルバムでは、京ことばの流麗な朗読で好評を博している山下智子の原文朗読に続いて記載されている雅楽曲を、平安時代の楽譜を用いて演奏するという企画・構成を採ることにしました。
さて、雅楽は日本書紀等の記載から1500年以上もの歴史があることが分かります。そして、雅楽全盛期の平安時代と現在の楽譜を比較すると、驚くほど異なっています。
これまでは平安朝雅楽譜から現行雅楽では廃れてしまっている記号、奏法を取り去るなどして現行雅楽風に改作されて演奏されることが多かったのですが、長谷川景光は受け継がれた伝承を尊重しつつ原譜のままで、また記された奏法に従って演奏することを旨としています。
長谷川景光/龍笛、高麗笛、神楽笛、神楽歌、笏拍子。
田渕勝彦/大篳篥。
左野龍子/笙、楽琵琶(抜頭、春鴬囀入破、狛犬急)。
常法寺美和/楽琵琶(鳥破、落蹲急)。
米澤茉莉佳/楽箏、和琴。
平安楽舎/打物。
1.枕草子第一段/朗読
2.御神楽榊本歌/神楽歌、神楽笛、和琴三重奏
3.枕草子第四十七段第一節/朗読
4.大食調大平楽破 半帖/龍笛、笙二重奏
5.壱越調鳥破/管絃
6.大食調抜頭/龍笛、楽琵琶二重奏
7.高麗調落蹲急/管絃
8.枕草子第百九十八段より第二百一段/朗読
9.盤渉調蘓合香入破/龍笛、楽箏二重奏
10.壱越調春鴬囀入破/龍笛、大篳篥、楽琵琶三重奏
11.平調想夫恋/龍笛、笙二重奏
12.枕草子第二百二段/朗読
13.黄鐘調調子/龍笛独奏
14.枕草子第二百五十六段第二十節
15.高麗調狛犬急/高麗笛、楽琵琶二重奏
【古楽譜解読校訂・復元】
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛古譜、鳳笙秘譜、大篳篥遷譜、三五要録。
米澤茉莉佳/仁智要録、和琴譜。
2015年5月13日リリース/フォンテック(FOCD20105)
定価2,000円(税別)
平家物語が成立したのは平家が滅亡した1185年以後であり、一説には1190年から1218年の約30年の間と言われています。すなわち、今年は平家物語成立820年から792年との間に位置することから、「平家物語成立800年」と位置づけ、この時期に合わせてアルバムの制作を企画いたしました。
そして、平家物語には雅楽の曲名が多く登場し、そのいずれもが名場面に花を添える形となっています。
そこで、このアルバムでは平家物語の短い朗読があって、これに続いて登場する雅楽曲を記されている楽器編成で、しかも平安時代の楽譜を用いて演奏するという企画・構成を採ることにしました。そして、次の5つのポイントがこのアルバムの魅力です。
●存在すら知られていない高麗篳篥(大篳篥)の秘曲「啄木」を復曲、初録音!
●撥だけでなく親指と中指で弾く秘曲奏法による初めての楽琵琶演奏、秘曲「流泉」の初演録音!
●廃れてしまった宮中神楽・神事の秘曲「湯立」を復曲、初録音!
●初めての企画となる平家物語の雅楽を成立800年に合わせて、しかも平安時代の楽譜で演奏!
●屈指の男性朗読家、磯浦康二氏の心を揺さぶる熟練の表現力!
1.高野本巻第一「祇園精舎」より/朗読
2.壱越調 品玄/龍笛
3.高野本巻第三「大臣流罪」より/朗読
4.返風香調 石上流泉/妙音院流秘曲/楽琵琶
5.高野本巻第四「厳島御幸」より/朗読
6.沙陀調 新楽乱声/龍笛
7.高野本巻第六「小督」より/朗読
8.平調 想夫恋/管絃
9.高野本巻第六「嗄声」より/朗読
10.大食調 賀王恩/管絃
11.延慶本第五本「敦盛討れ給ふ事」より/朗読
12.黄鐘調 啄木/高麗篳篥秘曲/大篳篥
13.高野本巻第十「千手前」より/朗読
14.平調 皇じょうの急/龍笛、楽琵琶
15.高野本巻第十「熊野参詣」より/朗読
16.盤渉調 青海波/管絃
17.高野本巻第十一「鏡」より/朗読
18.御神楽 湯立/神楽歌、神楽笛、和琴
【演奏】
長谷川景光/龍笛、大篳篥(啄木)、神楽笛、神楽歌(多重録音)。
橋本薫明/笙。
左野龍子/楽琵琶(石上流泉、皇じょうの急)。
常法寺美和/楽琵琶(想夫恋、賀王恩、青海波)。
米澤茉莉佳/楽箏、和琴。
平安楽舎/他。
【解読校訂】
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛古譜、平安朝神楽笛譜、鳳笙譜、大篳篥遷譜、高麗篳篥秘譜、三五要録、仁智要録(青海波)。
米澤茉莉佳/仁智要録(想夫恋、賀王恩)、和琴譜。
【朗読】
磯浦康二/『平家物語』高野本、延喜本。
2010年11月21日リリース/フォンテック(FOCD20084)
定価2,190円(税別)
嵯峨天皇(786〜842、在位809〜823)は、詩人天皇として知られていますが、それだけでなく楽をこよなく愛された雅楽天皇でもありました。
「・・・無位無号にて山水に詣で逍遙し、無事無為にして琴書を翫し、以て澹泊を思はんと欲す。」この遺詔(天皇の遺書)からも分かるように、嵯峨天皇は琴をこよなく愛されただけでなく曲の新作、改作を奨励し、また自らも作曲されました。
すなわち渡来音楽であった雅楽を国風雅楽として発展させた、偉大な功労者であると言えます。さらに、平安中期に成立した音楽小説『うつほ物語』では、重要な登場人物として描かれています。
そして、このCDは嵯峨天皇に因んだ曲を収載し、嵯峨天皇に捧げるアルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa
龍笛:郎君子、最涼州、散手破陣楽破、林歌、感城楽、鳥向楽、栴檀風
大篳篥:蘇芳菲
橋本薫明 Yoshiaki Hashimoto/笙:郎君子、林歌、鳥向楽
左野龍子 Ryuko Sano/楽琵琶:最涼州、蘇芳菲
常法寺美和 Miwa Johoji/楽琵琶:郎君子、林歌、鳥向楽
米澤茉莉佳 Marika Yonezawa/楽箏:郎君子、散手破陣楽破、林歌、感城楽、鳥向楽、栴檀風
平安楽舎 Heiangakusha/他
1.平調 郎君子/管絃
2.沙陀調 最涼州 半帖/龍笛、楽琵琶
3.大食調 散手破陣楽破 半帖/龍笛、楽箏
4.平調 林歌/管絃
5.乞食調 蘇芳菲/大篳篥、楽琵琶
6.水調 感城楽/龍笛、楽箏
7.盤渉調 鳥向楽 半帖/管絃
8.九声黄鐘調 栴檀風/龍笛、楽箏
長谷川景光/解読校訂:郎君子、最涼州、散手破陣楽破、林歌、蘇芳菲、感城楽、鳥向楽
(平安朝雅楽譜:新撰楽譜、龍笛譜、三五要録、仁智要録、大篳篥遷譜、他)
長谷川景光/作曲:栴檀風
2009年7月21日リリース/フォンテック(FOCD20073)
定価2,190円(税別)