紫式部といえば、世界最古の小説であり海外でも高く評価されている『源氏物語』の作者とだけ思われがちです。しかし、同著となる『紫式部日記』、別名『紫日記』も、平安王朝の実像を後世に伝える貴重な日記文学として位置づけられています。その内容は、中宮彰子の出産が迫った1008年(寛弘5年)秋から1010年(寛弘7年)正月までの約1年半の間に書き遺した日記、書状で構成されています。
『源氏物語』においては、多くの雅楽曲名が登場し、また演奏・演舞の場面が描かれています。しかし、これは小説であるが故にフィクションと解釈されます。一方、『紫式部日記』に書かれている雅楽の場面は歴史的事実であり、雅楽研究に一石を投じる貴重な要素を含んでいます。
このアルバムでは、『紫式部日記』の朗読と共に、記載された雅楽曲を当時の雅楽譜で演奏するという、本邦初となる企画に基づき制作されました。
1. 第一部 敦成親王誕生記 第一章 寛弘五年秋の記 一 土御門殿邸の初秋の様子 朗読/松浦このみ
2. 平調「萬歳楽」 楽琵琶/左野龍子。
3. 大食調「大平楽道行(朝小子)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
4. 大食調「大平楽破(武昌楽)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
5. 大食調「大平楽急(合勧塩)」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
6. 第一部 敦成親王誕生記 第二章 寛弘五年冬の記 六 御前の管弦・舞楽の御遊 朗読/松浦このみ
7. 壱越調「賀殿破」 龍笛/長谷川景光、楽琵琶/左野龍子。
8. 壱越調「賀殿急」 龍笛/長谷川景光、楽琵琶/左野龍子。
9. 大食調「長慶子」 龍笛/左野龍子、大篳篥/長谷川景光。
10. 第三部 宮仕生活備忘記 第三章 寛弘七年正月 若宮たちの御戴餅 三 正月十五日敦良親王御五十日の祝い 朗読/松浦このみ
11. 催馬楽「安名尊」 楽琵琶/左野龍子、歌/長谷川景光。
12. 双調「鳥破」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
13. 双調「鳥急」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
14. 双調「調子」 笙/左野龍子。
左野龍子 楽琵琶、楽箏、龍笛、笙。
長谷川景光 龍笛、大篳篥。
松浦このみ 朗読。
解読校訂:左野龍子(『三五要録』、『仁智要録』、『鳳笙秘譜』。)
解読校訂:長谷川景光(『龍笛譜』、『催馬楽笛譜』。)
解読復元:長谷川景光(「長慶子」大篳篥譜、「鳥破・急」龍笛譜。)
原文校訂:渋谷栄一(『紫式部日記』黒川本。)
2024年9月21日リリース/日本アコースティックレコーズ(NARC-2190)
定価2,000円(税別)
源博雅は平安時代中期の公家ですが、日本の歴史上の人物の中で、博雅ほど多くの逸話、説話を遺している人物は希有と言えます。
さながら神の如く、妙なる楽の音とともに生まれ出でたとか、琵琶の秘曲を修得するため蝉丸法師の住む逢坂に3年間毎夜通ったなど枚挙にいとまがないほどです。
醍醐天皇の第一皇子である克明親王が父でしたが、皇位継承者であるはずの克明親王が早く身罷かられたため、臣籍に下り源の姓を名乗ることになるのですが、父が健在であれば、皇位継承者として天皇になっていたはずなのです。
また、博雅は多くの楽器の演奏に秀で、また研究者としても多くの楽譜を編纂し、そして作曲も行うという、近代以前における最も偉大な音楽家の一人と位置づけられます。
博雅には、多くの呼び名があり、博雅の三位、博雅卿、長秋卿などが知られています。
さて、このアルバムでは、博雅に関する説話などの記載に基づく楽曲の多くが秘曲とされていることに着目し、選曲しました。龍笛、笙、楽琵琶、楽箏による二重奏と、笙、琵琶、大篳篥の独奏を収録しています。
1. 大食調「入調」 笙/左野龍子。
2. 沙陀調「安楽塩」 龍笛/長谷川景光、笙/左野龍子。
3. 風香調「大常博士楊真操」 楽琵琶/左野龍子。
4. 黄鐘調「啄木」 大篳篥/長谷川景光。
5. 啄木調「爪調、緒合」 楽琵琶/左野龍子。
6. 啄木調「啄木」 楽琵琶/左野龍子。
7. 大食調「長慶子」 龍笛/長谷川景光、左野龍子。
8. 返風香調「石上流泉」 楽琵琶/左野龍子。
9. 盤渉調「萬秋楽序」 龍笛/長谷川景光、楽箏/左野龍子。
10. 返風香調「上原石上流泉」 楽琵琶/左野龍子。
楽琵琶、楽箏、龍笛、笙/左野龍子
龍笛、大篳篥/長谷川景光
三五要録、仁智要録、西園寺実兼琵琶譜、鳳笙秘譜を解読校訂/左野龍子
新撰楽譜、龍笛譜、高麗篳篥秘譜を解読校訂/長谷川景光
2024年2月6日リリース/日本アコースティックレコーズ(NARC-2189)
定価2,000円(税別)
アルバムタイトルである「わくらば(邂逅)」は、偶然の出会いを意味します。三人の出会いはチラシ配りをお願いすることから始まりました。そして、互いの音楽性に共感し、平安朝雅楽の演奏とピアノ演奏という時空を超えたコラボレーションを作り上げました。
「平安の調べは美しく、そして悲しく」。これが、このアルバムのコンセプトです。
龍笛は966年と1137年に作られた楽譜を、楽琵琶は平安時代末期に作られた楽譜を演奏し、そしてピアノは長谷川景光の作曲・編曲により、遠藤征志が演奏しました。
長谷川景光/龍笛
遠藤征志/ピアノ
左野龍子/楽琵琶
1.ピアノのための青海波音取
2.盤渉調 青海波
3.ピアノのための西王楽音取
4.黄鐘調 西王楽破
5.ピアノのための小娘子音取
6.平調 小娘子
7.ピアノのための竹林楽音取
8.盤渉調 竹林楽
9.ピアノのための抜頭音取
10.大食調 抜頭
11.ピアノのための想夫恋音取
12.平調 想夫恋
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛譜を解読校訂。ピアノ譜を作曲・編曲。
左野龍子/三五要録を解読校訂。
2019年4月3日リリース/フォンテック(FOCD20117)
定価2,000円(税別)
『源氏物語』に比肩する中古文学の双璧であり、わが国最古の随筆である『枕草子』には、多くの雅楽の曲名が記されています。
このアルバムでは、京ことばの流麗な朗読で好評を博している山下智子の原文朗読に続いて記載されている雅楽曲を、平安時代の楽譜を用いて演奏するという企画・構成を採ることにしました。
さて、雅楽は日本書紀等の記載から1500年以上もの歴史があることが分かります。そして、雅楽全盛期の平安時代と現在の楽譜を比較すると、驚くほど異なっています。
これまでは平安朝雅楽譜から現行雅楽では廃れてしまっている記号、奏法を取り去るなどして現行雅楽風に改作されて演奏されることが多かったのですが、長谷川景光は受け継がれた伝承を尊重しつつ原譜のままで、また記された奏法に従って演奏することを旨としています。
長谷川景光/龍笛、高麗笛、神楽笛、神楽歌、笏拍子。
田渕勝彦/大篳篥。
左野龍子/笙、楽琵琶(抜頭、春鴬囀入破、狛犬急)。
常法寺美和/楽琵琶(鳥破、落蹲急)。
米澤茉莉佳/楽箏、和琴。
平安楽舎/打物。
1.枕草子第一段/朗読
2.御神楽榊本歌/神楽歌、神楽笛、和琴三重奏
3.枕草子第四十七段第一節/朗読
4.大食調大平楽破 半帖/龍笛、笙二重奏
5.壱越調鳥破/管絃
6.大食調抜頭/龍笛、楽琵琶二重奏
7.高麗調落蹲急/管絃
8.枕草子第百九十八段より第二百一段/朗読
9.盤渉調蘓合香入破/龍笛、楽箏二重奏
10.壱越調春鴬囀入破/龍笛、大篳篥、楽琵琶三重奏
11.平調想夫恋/龍笛、笙二重奏
12.枕草子第二百二段/朗読
13.黄鐘調調子/龍笛独奏
14.枕草子第二百五十六段第二十節
15.高麗調狛犬急/高麗笛、楽琵琶二重奏
【古楽譜解読校訂・復元】
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛古譜、鳳笙秘譜、大篳篥遷譜、三五要録。
米澤茉莉佳/仁智要録、和琴譜。
2015年5月13日リリース/フォンテック(FOCD20105)
定価2,000円(税別)
平家物語が成立したのは平家が滅亡した1185年以後であり、一説には1190年から1218年の約30年の間と言われています。すなわち、今年は平家物語成立820年から792年との間に位置することから、「平家物語成立800年」と位置づけ、この時期に合わせてアルバムの制作を企画いたしました。
そして、平家物語には雅楽の曲名が多く登場し、そのいずれもが名場面に花を添える形となっています。
そこで、このアルバムでは平家物語の短い朗読があって、これに続いて登場する雅楽曲を記されている楽器編成で、しかも平安時代の楽譜を用いて演奏するという企画・構成を採ることにしました。そして、次の5つのポイントがこのアルバムの魅力です。
●存在すら知られていない高麗篳篥(大篳篥)の秘曲「啄木」を復曲、初録音!
●撥だけでなく親指と中指で弾く秘曲奏法による初めての楽琵琶演奏、秘曲「流泉」の初演録音!
●廃れてしまった宮中神楽・神事の秘曲「湯立」を復曲、初録音!
●初めての企画となる平家物語の雅楽を成立800年に合わせて、しかも平安時代の楽譜で演奏!
●屈指の男性朗読家、磯浦康二氏の心を揺さぶる熟練の表現力!
1.高野本巻第一「祇園精舎」より/朗読
2.壱越調 品玄/龍笛
3.高野本巻第三「大臣流罪」より/朗読
4.返風香調 石上流泉/妙音院流秘曲/楽琵琶
5.高野本巻第四「厳島御幸」より/朗読
6.沙陀調 新楽乱声/龍笛
7.高野本巻第六「小督」より/朗読
8.平調 想夫恋/管絃
9.高野本巻第六「嗄声」より/朗読
10.大食調 賀王恩/管絃
11.延慶本第五本「敦盛討れ給ふ事」より/朗読
12.黄鐘調 啄木/高麗篳篥秘曲/大篳篥
13.高野本巻第十「千手前」より/朗読
14.平調 皇じょうの急/龍笛、楽琵琶
15.高野本巻第十「熊野参詣」より/朗読
16.盤渉調 青海波/管絃
17.高野本巻第十一「鏡」より/朗読
18.御神楽 湯立/神楽歌、神楽笛、和琴
【演奏】
長谷川景光/龍笛、大篳篥(啄木)、神楽笛、神楽歌(多重録音)。
橋本薫明/笙。
左野龍子/楽琵琶(石上流泉、皇じょうの急)。
常法寺美和/楽琵琶(想夫恋、賀王恩、青海波)。
米澤茉莉佳/楽箏、和琴。
平安楽舎/他。
【解読校訂】
長谷川景光/新撰楽譜、龍笛古譜、平安朝神楽笛譜、鳳笙譜、大篳篥遷譜、高麗篳篥秘譜、三五要録、仁智要録(青海波)。
米澤茉莉佳/仁智要録(想夫恋、賀王恩)、和琴譜。
【朗読】
磯浦康二/『平家物語』高野本、延喜本。
2010年11月21日リリース/フォンテック(FOCD20084)
定価2,190円(税別)
嵯峨天皇(786〜842、在位809〜823)は、詩人天皇として知られていますが、それだけでなく楽をこよなく愛された雅楽天皇でもありました。
「・・・無位無号にて山水に詣で逍遙し、無事無為にして琴書を翫し、以て澹泊を思はんと欲す。」この遺詔(天皇の遺書)からも分かるように、嵯峨天皇は琴をこよなく愛されただけでなく曲の新作、改作を奨励し、また自らも作曲されました。
すなわち渡来音楽であった雅楽を国風雅楽として発展させた、偉大な功労者であると言えます。さらに、平安中期に成立した音楽小説『うつほ物語』では、重要な登場人物として描かれています。
そして、このCDは嵯峨天皇に因んだ曲を収載し、嵯峨天皇に捧げるアルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa
龍笛:郎君子、最涼州、散手破陣楽破、林歌、感城楽、鳥向楽、栴檀風
大篳篥:蘇芳菲
橋本薫明 Yoshiaki Hashimoto/笙:郎君子、林歌、鳥向楽
左野龍子 Ryuko Sano/楽琵琶:最涼州、蘇芳菲
常法寺美和 Miwa Johoji/楽琵琶:郎君子、林歌、鳥向楽
米澤茉莉佳 Marika Yonezawa/楽箏:郎君子、散手破陣楽破、林歌、感城楽、鳥向楽、栴檀風
平安楽舎 Heiangakusha/他
1.平調 郎君子/管絃
2.沙陀調 最涼州 半帖/龍笛、楽琵琶
3.大食調 散手破陣楽破 半帖/龍笛、楽箏
4.平調 林歌/管絃
5.乞食調 蘇芳菲/大篳篥、楽琵琶
6.水調 感城楽/龍笛、楽箏
7.盤渉調 鳥向楽 半帖/管絃
8.九声黄鐘調 栴檀風/龍笛、楽箏
長谷川景光/解読校訂:郎君子、最涼州、散手破陣楽破、林歌、蘇芳菲、感城楽、鳥向楽
(平安朝雅楽譜:新撰楽譜、龍笛譜、三五要録、仁智要録、大篳篥遷譜、他)
長谷川景光/作曲:栴檀風
2009年7月21日リリース/フォンテック(FOCD20073)
定価2,190円(税別)
平安時代には薫物(たきもの)という香りの文化がありました。『源氏物語』にも数多くの場面で薫物が登場します。薫物は、シルクロードの終着点である日本の文化の特性と優位性を示す証しであり誇りであると言えます。
平安時代には六種(むくさ)の薫物という6種類の空薫物(そらだきもの)、現代風に言えば室内芳香用のブレンド香がありました。この六種の薫物は、4から8種類の粉末香を蜜で練り合わせて作る香で、「梅花」「荷葉」「侍従」「菊花」「落葉」「黒方」の名が付けられています。
このアルバムはその六種の薫物の名を曲名とし、長谷川景光が平成18年6月から9カ月かけて作曲した現代雅楽作品集であり、吹物(龍笛、大篳篥)と弾物(楽琵琶、楽箏)の編曲が加えられています。
また、フリーリズムの序以外は全曲異なるリズムで作曲されています。
なお、最後の「蘇合香」だけが平安朝雅楽の復曲となっています。
長谷川景光/Kagemitsu Hasegawa/龍笛、楽琵琶、大篳篥
常法寺美和/Miwa Johoji/楽琵琶
米澤茉莉佳/Marika Yonezawa/楽箏
1.九声盤渉調 落葉
2.九声双調 梅花
3.九声盤渉調 侍従
九声黄鐘調 荷葉一具
4.荷葉 序
5.荷葉 破
6.荷葉 急
7.九声盤渉調 菊花
8.九声平調 黒方 序
9.平安朝雅楽盤渉調 蘇合香 入破
長谷川景光/作曲:落葉、梅花、侍従、荷葉、菊花、黒方
長谷川景光/解読校訂:蘇合香(新撰楽譜、三五要録、仁智要録)
2007年7月21日リリース/フォンテック(FOCD20063)
定価2,190円(税別)
『源氏物語』では、管絃6曲、舞楽14曲が登場しますが、ここに描かれた雅楽の調べこそが源氏物語の雅な世界を演出しているといっても過言ではありません。
このアルバムは、近代雅楽の楽譜とは全く異なる平安時代の楽譜を用いていますが、特に源博雅が著した『新撰楽譜』による演奏は、博雅公の晩年に生誕した紫式部がまさに聴いていた音楽であり、『源氏物語』に描かれた雅楽そのものです。
『源氏物語』の執筆開始時期及び完成時期については、諸説があり定かではありません源氏物語研究の第一人者である早稲田大学教授の中野幸一氏の見解に従い、寛弘2年(1005)12月29日、藤原道長の命により紫式部が中宮・彰子に出仕した日をもって、『源氏物語』が成立したと捉え、これを根拠としてこのアルバムは源氏物語成立千年記念の作品といたしました。
また、各曲に『源氏物語』の朗読を添えてあり、斯界の第一人者である幸田弘子による原典朗読となっています。
長谷川景光/Kagemitsu Hasegawa/龍笛、大篳篥
田渕勝彦/Katsuhiko Tabuchi/大篳篥
田島和枝/Kazue Tajima/笙
常法寺美和/Miwa Johoji/楽琵琶
米澤茉莉佳/Marika Yonezawa/楽箏
平安楽舎/Heiangakusha/他
幸田弘子/Hiroko Koda/朗読
1.盤渉調 青海波/第七帖 紅葉賀
2.盤渉調 秋風楽/第二十一帖 少女
3.黄鐘調 喜春楽/第二十四帖 胡蝶
4.平調 萬歳楽/第三十四帖 若菜上
5.大食調 仙遊霞/第三十五帖 若菜下
6.大食調 大平楽道行(朝小子)/第三十五帖 若菜下
7.黄鐘調 海青楽/第四十七帖 総角
8.九声双調 作物 藤花/第四十九帖 宿木
長谷川景光/解読校訂:全曲(新撰楽譜、龍笛古譜、三五要録、仁智要録、大篳篥遷譜、打物譜
長谷川景光/作曲:藤花
2006年2月21日リリース/フォンテック(FOCD20055)
定価2,190円(税別)
※完売のため廃盤となりました。ご購入いただきありがとうございました。
楽聖・源博雅は多くの楽器の演奏に秀で、研究者として多くの楽譜を撰集し、作曲も行うという三拍子揃った近代以前における最も偉大な音楽家です。
このアルバムは、多くの逸話から読み取れる博雅の感性の豊かさと一途な想いが多くの女性を魅惑し、博雅もまたその想いを笛に託したであろうことを思い巡らし、恋愛物の短編集をイメージして企画制作されました。
アルバムの最後に収めた「斎王徽子」は、博雅の11歳年下の従姉妹であり三十六歌仙の一人である斎王徽子への叶わぬ想いの相聞の曲として長谷川景光が作曲しました。
また、博雅が得意とした楽器は楽琵琶、横笛、大篳篥であるとする『懐竹抄』の記載に基づき、この三つの楽器で構成するまさに博雅へのMusikalisches(音楽の捧物)なのです。
また、共に平安時代の楽譜である龍笛譜(『新撰楽譜』)と楽琵琶譜(『三五要録』)による二重奏を2曲収録するという、音楽史上初となる画期的アルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa/龍笛、楽琵琶
田渕勝彦 Katsuhiko Tabuchi/大篳篥、楽琵琶
1.盤渉調 蘓莫者 序
2.盤渉調 蘓莫者 入破
3.水調 九城樂 半帖
4.黄鐘調 央宮楽
5.盤渉調 逝字女
6.黄鐘調 赤白桃李花 破一帖
7.大蔟角調 曹娘褌脱 褌脱
8.盤渉調 萬秋楽 破一帖
9.九声平調 斎王徽子 作物
長谷川景光/解読校訂:全曲(平安朝雅楽譜:新撰楽譜、龍笛古譜、三五要録)
長谷川景光/作曲:斎王徽子、編曲:楽琵琶譜の一部
2005年3月21日リリース/フォンテック(FOCD20052)
定価2,190円(税別)
※完売のため廃盤となりました。ご購入いただきありがとうございました。
義経が京の五条の大橋で横笛いたを吹というくだりは有名ですが、義経が横笛の名手でありその横笛とは龍笛のことで、その龍笛で奏していたのが雅楽であったことは余り知られていません。
『平家物語』を補完する書として知られる『義経記』には、義経が龍笛を吹く場面が6度出てきますが、笙、琵琶、琴との管弦の場面も克明に記されています。
この『義経記』の流れに沿って、各場面に対応する曲を配するという構成になっており、元NHKアナウンサーである磯浦氏が朗読を担当しています。
また、義経と同時代の龍笛譜である基政譜(『龍笛古譜』)の史上初の解読・復元に基づき、このアルバムが制作されました。なお、楽琵琶は『明治撰定譜』で、朗読は『義経記』の各段触りを原典で朗読しまいます。長谷川景光が再現した平安末期の義経の笛、音の響きを、世界的な音楽家としても知られるオノ・セイゲンがプロデュースし、高度の録音によりまるで平安末期の空間に迷いこんだかのような錯覚をするほどです。
そして、このCD/SACDは雅楽、龍笛を愛した義経に捧げるアルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa/龍笛
田渕勝彦 Katsuhiko Tabuchi/楽琵琶
岡澤嘉春 Yoshiharu Okazawa/読経
磯浦康二 Koji Isoura/朗読
オノ・セイゲン Seigen Ono/プロデュース
1.平調 小郎子 重奏(巻第一ノ七 遮那王殿鞍馬出の事)
2.黄鐘調 調子 龍笛独奏(巻第三ノ五 弁慶洛中に於て人の太刀奪ひ取る事)
3.壱越調 武徳楽 重奏(巻第三ノ六 弁慶義経に君臣の契約申す事)
4.平調 萬歳楽 龍笛独奏(巻第五ノ六 吉野法師判官を追つかけ奉る事)
5.盤渉調 劔氣褌脱 重奏(巻第六ノ四 判官南都へ忍び御出ある事)
6.平調 越殿楽 龍笛独奏(巻第六ノ四 判官南都へ忍び御出ある事)
7.平調 王昭君 重奏(巻第七ノ一 判官北國落の事)
8.太食調 長慶子 重奏(巻第七ノ五 平泉寺御見物の事)
9.読経 般若心経(巻第八ノ六 判官御自害の事)
長谷川景光/解読校訂:全曲(平安朝雅楽譜:新撰楽譜、龍笛古譜、三五要録)
2004年3月21日リリース/サイデラレコード(SD-1026H)
定価3,000円(税別)
※完売のため廃盤となりました。ご購入いただきありがとうございました。
仁明天皇(810〜850)と源博雅(918〜980)との関係はといえば、仁明天皇の御曾孫である醍醐天皇の御孫が源博雅ということになります。
仁明天皇の時代は、それまでの漢風文化(漢才)から脱して国風文化(大和心)への転換期であり、宮廷文化の隆盛期と位置づけられています。
仁明天皇は雅楽を最も愛された天皇であると言っても過言ではなく、自ら作曲されただけでなく、既存曲を別の調に遷させるなど、雅楽に深く関わられた天皇でした。
黄鐘調の長生楽、西王楽、夏引楽、榎葉井の四曲は続教訓鈔の記載通り仁明天皇の御製であり、このことは源博雅撰修『新撰楽譜』の曲の配列からも裏付けられます。
特に西王楽、榎葉井の両曲は平安雅楽の最高傑作であり、ドリアン・モードが織りなす哀愁を帯びた旋律に心を打たれます。
そして、このCDは仁明天皇御製の曲を始め仁明天皇に因んだ曲を収載し、仁明天皇に捧げるアルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa/龍笛
橋本薫明 Yoshiaki Hashimoto/笙
1.黄鐘調 西王楽 序
2.黄鐘調 西王楽 破
3.双 調 春庭楽
4.黄鐘調 調子
5.黄鐘調 榎葉井
6.盤渉調 青海波
7.黄鐘調 長生楽 序
8.黄鐘調 長生楽 破
9.水 調 拾翠楽 序
10.水 調 拾翠楽 破
11.黄鐘調 夏引楽 序
12.黄鐘調 夏引楽 破
長谷川景光/解読校訂:全曲(平安朝雅楽譜:新撰楽譜)
2002年11月21日リリース/フォンテック(FOCD20032)
定価2,667円(税別)
日本の歴史上の人物の中で、源博雅(みなもとのひろまさ。918〜980)ほど多くの逸話を遺している人物は少ないのではないでしょうか。
さながら神の如く、妙なる楽の音とともに生まれ出でたとか、琵琶の秘曲を修得するため蝉丸法師の住む逢坂に3年間毎夜通ったなど枚挙にいとまがないほどです。
最近では、夢枕獏氏の小説『陰陽師』の副主人公として知られています。
博雅は多くの楽器の演奏に秀で、また研究者としても多くの楽譜を撰集し、そして作曲も行うという三拍子揃った近代以前における最も偉大な音楽家の一人と位置づけられます。
博雅が撰集した楽譜のうち現存するのは、龍笛譜である『新撰楽譜』(966)の残巻の写本のみです。『新撰楽譜』は現存する最古の笛譜として世界的にも貴重な文化遺産であるため、国内外の研究者から注目され、研究対象となってきました。
そして、このCDは『新撰楽譜』の中から珠玉の曲を選んで収載し、源博雅に捧げるアルバムとなっています。
長谷川景光 Kagemitsu Hasegawa/龍笛
田島和枝 Kazue Tajima/笙
1.盤渉調 萬秋楽 序一帖
2.黄鐘調 海青楽
3.林邑 乱聲
4.水調 重光楽
5.盤渉調 青海波
6.黄鐘調 承燕楽
7.双調 柳花苑
8.盤渉調 竹林楽
9.水調 汎龍舟 序
長谷川景光/解読校訂:全曲(平安朝雅楽譜:新撰楽譜)
2001年11月21日リリース/フォンテック(FOCD20026)
定価2,667円(税別)
この5枚のCDは、取違小恵子氏のプロデュースにより、小磯裕司氏がデザインし、2014年5月に完成しました。(非売品)
上の3つの画像はイメージ・ポスターです。
音楽/長谷川景光
2006年2月15日リリース/NHKエンタープライズ(NSDS-9714)
定価5,000円(税別)
龍笛/長谷川景光
2005年1月5日リリース/講談社X文庫
定価4,500円(税別)
龍笛/長谷川景光
2003年3月26日リリース/キング・レコード(KICA 1288)
定価2,800円(税別)